クリエイターズコラム
「推し活」とデザイン

近年よく耳にするようになった「推し活」というワード。
みなさんはご存知ですか?

私は2次元と2.5次元のオタクで、
日々を推しと共におもしろおかしく生きています。

今回のコラムでは、「推し活」を通して、
近年のクリエイティブの変化について考えていきたいと思います。

 

 

01.「推し活」とは

まずはじめに、「推し活」とは、自分の「推し」と呼ばれる好きな人や物事を愛で、
様々な形で応援する活動のことを指します。
「推し」の対象は、例えば、アイドルや歌手、俳優、スポーツ選手、アニメや漫画などのキャラクター、
鉄道や車、建築物、刀剣などの物に至るまで人それぞれ。
その人が好きで応援するもの全てが対象となります。

一昔前までは、オタク活動としてアングラなイメージが強かった印象ですが、
時の流れと共にそのイメージも変化。
多様性を重要視する社会になってきたこともあり、
堂々と趣味として公言する人も増え、文化の拡大に繋がりました。

今では「推し活」というワードが文化の垣根を超えて認知度が高まり、
幅広い企業のPRにも使用されるように。
そういった人々をターゲットにしたマーケティングも増えました。
今平成で流行ったものがリバイバルし、
グッズや期間限定のショップ・カフェで展開されているのがいい例ですね。
多くの企業が「推し活」の経済効果に大きな期待を寄せていると言っていいでしょう。

 

 

02.「推し活」ってどんなことをするの?

では、実際に「推し活」とはどのようなことをしていると思いますか?
具体的にこれ!といった決まりがあるわけではなく、
それぞれが自由に自分の“好き”を追求しながら楽しく活動しているため正解はありません。
同じ行動をしていても、楽しみ方はその人次第。
全く同じにはならないのが面白いところです。

私はよくグッズを買ったり、
推しのぬいぐるみやアクリルスタンドを連れてライブや舞台に行ったり、
コラボイベントに行ったり、推しの配信映像を見たりなどなどしています。
同じ「推し」を通して、社会人になってからも新しい友達ができる機会があることは、
自分の視野を広げる意味でもありがたいですね。

 

 

03.デザインの必要性

さて、話をデザインと結びつけると、
私は「推し活」と「デザイン」は切り離しては考えられないものだと思っています。

「推し活」のみならず、他にも当てはまることではありますが、
世の中にあるものはすべて「デザイン」されたものです。

生活にデザインが伴っていることが当たり前の社会で、
興味を持って「推す」まで到達するには、
相応の魅力的な「デザイン」が必要になると考えるからです。

例えば、アイドルや俳優、スポーツ選手など様々な推す対象がいますが、
そのどれもにデザインが付随しています。
衣装やヘアメイク、ユニフォーム、舞台演出、円盤のパッケージやグッズなどなど、
それぞれに合わせたデザインで付加価値をつけているのです。
2次元のキャラクターや、鉄道や建築物などの物は、
まずそれ自体がデザインの対象になっていますね。

 

 

04.求められるデザインとは?

推し活の“グッズ”に話を絞ると、
最近は手軽に絵が描ける無料アプリなどが普及したことで、
ファンが絵を描く・デザインすることが、昔に比べてより簡単にできるようになっています。
さらに、まだ様々な課題はあるものの、AIの進化によりハイクオリティな制作物が
すぐに出力できるようになってきました。
100円ショップなどでも推し活グッズと称して、
簡単にオリジナルのグッズが作れるような商品が売られるようになっています。

SNSが普及し、リアルタイムで情報を共有し合えることで、
自分の推し以外の推し活情報まで簡単に手に入るようになった世の中で、
求められるデザインとは一体なんでしょうか?

デザインは、より洗練されたものが求められるようになりました。

「推し活」がよりオープンな趣味へと変化したことにより、
露骨なデザインよりも、さりげなさやオシャレさを重視したデザインが好まれる傾向にあるように思います。

自分の界隈に限った話かもしれませんが、
例えばキャラクターのイラストが描かれているグッズよりも(アクリルスタンドや缶バッジなどを除く)、
身につけても違和感のないオシャレなものや、
キャラクターが実際に作中で使用していた物のグッズ化などが喜ばれている印象です。

さらに、推しのぬいぐるみを持ち歩く文化が発展したことで、
着せ替え用の服や小物などのグッズも人気が高いです。

オタクは考察しがちな生き物なので(諸説あります)、
どれだけ推しにまつわる要素が美しく組み込まれているか。
オリジナリティを出しつつ、遊び心をいかにプラスできているかが、
みんなが手軽にデザインを楽しめるようになった今、さらに重要になりました。

 

 

05.最後に

「推し活」の対象がもはや飽和状態と言っても過言ではない状況で、
「推し」に選ばれるには、他にはない個性や需要に合わせたコンセプト設定が必要不可欠です。
さらに、素人やAIでは成し得ない、
洗練されたユーモアのあるデザインであることが絶対条件になりました。

これは「推し活」に限った話ではなく、
先述したようにすべてのことに当てはまります。

私たちデザイナーは、常に流行を追いつつ、
変化する常識に対応しつつ、技術を磨き続けなければなりません。
期待に応えられるクリエイターとして腕を磨いた先に、
プラスワンの提案ができるかどうかが、
これから先のクリエイティブに対応できるかどうかの分かれ道になるのではないでしょうか。

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