クリエイターズコラム
アナログとデザイン

もう東京に出て何年経つだろう。
田舎者だった私は東京に憧れ、高校卒業後すぐに上京した。
全てが新鮮で、刺激的で、日々新しい発見に心躍り、無我夢中だった。

長い東京での生活を経て、気づけば便利な世の中が当たり前の日常となっている。
私の故郷は不便で何もない場所だが、自然に恵まれた町だった。
幼少期の遊び場はいつも海と山で、泥に塗れながらもさまざまな事を学んで育ったものだ。

今の子供達の遊び場は小さな液晶画面の中にあるらしい。
遊び場までここまでコンパクトでスマートになるとは驚きだ(笑)

この数十年の時代の進化は目まぐるしかった。
昭和、平成、令和と私は時代の変化を目の当たりにしてきた。

ノートと鉛筆はタブレットPCに変わり、
ショルダーフォンは手のひらサイズのスマートフォンとなった。

そしてそのスマートフォン1つで全てを叶えてくれる時代となった。

天才といわれる人達が急速にテクノロジーの進化を与えてくれたことで、
何不自由のない生活を送れている。

一方で、古き良き時代の面影は着実に薄れている。

父親は実家で看板屋を営んでいて、いまだに手書きで看板を手掛けている。
下書き無しで、失敗がゆるされない緊張感の中、一文字一文字に魂を込めて丁寧に描き上げていく。

今となってはそんな手書きの看板からぬくもりを感じる。
父親の無骨な文字がなんとも言えない味わいと温かみを醸し出し、妙に心地良い。

いわゆる「人間味」を感じるというものだ。

時代はアナログからデジタル社会になり、
より早く、正確で完璧なものがあたりまえに求められる。
悲しいかな、当然父親の仕事も淘汰されつつある。。。

アナログとデジタルは程よいバランスで共存しなくてはならないと思う。

人間の最大の特徴は感情がある事だ。
感情は繊細で365日同じ感情はない。積み重ねた時間と経験、気温や周りの環境でその一瞬の感情が変わってくる。
AIやロボットには真似できない特技だ。

そして私たちの仕事はデザインでそんな人々の感情を動かす事。

クラフトマン魂を胸に、人のぬくもりを感じるデザインを提供していきたい。

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