クリエイターズコラム
カブトムシとクワガタとデザイン

ひょんなことから、カブトムシとクワガタ育成がマイブームである。

みなさんは最強王図鑑 ~The Ultimate Battles~というコンテンツをご存知だろうか?
恐竜から動物、海の生きもの、虫など、ありとあらゆる生物がCGで異種格闘技戦を行う番組である。
4歳の息子がこれに比較的長い期間ハマっており、幾度となくみせられ続けている。

聞き慣れない生物の名前の中には、ヘラクレスオオカブトやらコーカサスオオカブトなど、
昔から人気のあった昆虫の名前もちらほら。
そして季節はうだるような夏であり、夏といえば虫取りだ。
私の中でにわかに昆虫熱に火がつき始めた。

私の住むアパートからほど近くの公園に、カナブンの集まるクヌギがあるのだが、
しばしば観察に行っても、カブトムシやクワガタのような“スター”には遭遇できないでいた。
そんな7月のとある暑い夜、妻と息子が虫取りにいくというので、会社帰りにぶらり立ち寄ることに。

そこにはなんとカブトムシがいたのである。しかも二匹。

雌雄一体ずつで、大きさとしては小ぶりなものの、
この都心でカブトムシに出会えたことに感動し、久しぶりに興奮してしまった。
昆虫熱が本格的に始まったのはこの頃からである。

それから一週間、会社帰りには毎晩のようにその木へ通い詰めた。
これは奇跡というしかないが、ほぼ毎日、カブトムシを1〜2匹を毎晩捉えることができたのである。
結果的には雌雄合わせて10匹ほどになった。

採集熱は夏休み中も加速し、8月に実家のある御殿場に帰省した際には毎晩と毎朝、
取り憑かれたかのように採集が日課になっていた。
カブトムシも数匹はいたが、ここで採れたのはほとんどクワガタだった。
これは少し冷涼な気候による生態系の違いかもしれない。

採れたのはコクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタといったメジャーどころではあるが、
最終的に、カブトムシ、クワガタすべて足すと20匹以上が集まった。
ほとんどを単独のケースで飼育しているため、いま我が家の玄関は飼育ケースであふれている。

それにしても、昔も今もなぜこれほどまでにカブトムシやクワガタに惹かれるのだろう。

子どもの頃は多くの、特に男子はほとんど通る道だし、大人になった今でも惹かれるのは、懐かしさだけではないはずである。
私の想像だが、それら魅力の一つはそれら昆虫のフォルムが、
他者と戦い、生き残るためだけに進化を遂げた、ミニマルで美しいデザインだからだということ、
そしてそのデザインのバリエーションが無数に存在するという多様性にロマンがあるからではないだろうか。

大きな顎(あご)や角、そしてその形状は他者と戦うためのものだけの機能であるし、
平たい身体の種類のものは風に飛ばされないように、木の中に隠れやすいように進化を遂げたという説がある。
そんな洗練された鎧を纏った戦士たちが小さな生態系(飼育ケース)の中で、夜暗くなると蠢き出し、
我先にと突進し餌を貪り喰う。敵とあれば倒しにかかる。その姿は実に本能的であり野性的。
なのにちょこまかと動き回る姿はなんとも愛おしい。このギャップがたまらないのだ。

涼しくなり夏も終わりつつあるが、その美しく愛らしいデザインを眺めながら、
来年に向け繁殖できるかどうかが楽しみな毎日である。

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