クリエイターズコラム
印象を変えるコーディネート

バスケットはお好きですか?

小学生の頃、漫画のスラムダンクに夢中になり、友達に誘われてミニバスを習い始めたのが私とバスケットボールとの出会いでした。中学生になり、練習の厳しさに挫けて部活はやめてしまいましたが、バスケは見るだけでも面白く、それからもNBAでの人間離れしたプレーに熱中していました。

中でもアレン・アイバーソンが大好きで、今も昔も私の中では最高にかっこいい選手だと思っています。NBAの中では小柄な体格ながら、類まれな身体能力を武器に巨体をくぐり抜けながらコートを駆け巡る姿を初めて見た時、大きな衝撃を受けました。華麗なドリブルやどんな態勢からでもシュートを決める得点力も去ることながら、HIPHOPを思わせるユニフォームの着こなしに魅了されたのです。

バスケットボールを習っていた頃の私は、試合の際にユニフォームを着るのが嫌でした。ランニングシャツにショートパンツというスタイルが、どう考えてもかっこ悪く思えたのです。体が華奢だったため、露わになった細い手足のせいでより貧相に見えたこともありますが、NBAの選手達に目を向けても、体型やプレーしている姿はとても美しいのに、なんとなくユニフォームが邪魔をしているように感じていました。(バスケットシューズだけはかっこいいと思っていましたが。)

もちろん、ユニフォームの形状には理由があります。バスケットボールは、シュートやドリブルに腕を激しく使い、試合中は絶え間なく走り続ける屋内スポーツです。野球やサッカーなどのように日光にさらされることが無いため、通気性や動きやすさを突き詰めると、肌は出来るだけ露出していた方が効率的です。その結果、ランニングシャツにショートパンツにたどり着いたのではないでしょうか。ちょっとダサいけどバスケをするには最適、そういった妥協の末にあの形に至ったのだと思っていました。

そんな中、アイバーソンの存在を知った時、ユニフォームに対するイメージが覆されたのです。

アイバーソンが全盛期に在籍していたチーム(76ers)のユニフォームは黒基調に赤い差し色が入ったものでした。それに合わせるように赤と黒で統一されたリストバンドやサポーター、コーンロウの髪に巻かれたヘッドバンド、全身に黒一色で刻まれたタトゥー、もちろんバッシュも黒と赤。それらと共に緩めに纏った少し大きめのユニフォームは、むしろとてもかっこよくオシャレに見えたのです。

アイバーソンはユニフォームの色を理由に76ersを選んだわけでもなく、アイバーソンがユニフォームの色を決めたわけでもありません。(アイバーソンはたまたま居合わせた事件で警察に逮捕されたことが理由で、どこのチームとも契約できなかったところを76ersだけが手を差し伸べて契約したのです。)アイバーソンは既存のデザインに合わせて、プレーを妨げないアイテムだけを使って、イメージを一変させてしまったのです。アイバーソンの登場以降、NBAでは同様の着こなしをする選手が増えていき、HIPHOP系のファッションがNBAに定着していきました。

制限のある中で、既存の要素を生かしつつ、新しい要素を加えたり、少しだけ改変したりすることで、ネガティブな印象を払拭させたアイバーソンのコーディネートは、デザインにも通じるものがあると思います。

当時はテレビでバスケットボールを見れる機会が少なかったため、レンタルビデオを借りてきたり雑誌を読み漁る日々でした。今ではYouTubeなどのSNSにたくさんの動画があがっています。ぜひ一度、アイバーソンのプレーとコーディネートを見て頂ければと思います。

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