
映画とゴルフをこよなく愛する、秋山です。
最近は、最新の映画に飽き足らず、映画に夢中なった90sの作品や生まれた80s以前の映画を観返す時間が増えています。
映画のいちファンとしてあーだこーだ好き勝手に映画の感想や評価をしている訳ですが、デザインの仕事をしている観点で映画を考えると色々思うことがあるなぁと感じます。
ストーリー・シナリオ・プロット制作、監督選び、キャスティング、カメラマン、音響などのスタッフチームのキャスティング、サウンドデザイン、映画を認知させる為の広告やトレーラーの制作、パンフレットの制作と、まさに映画作りも一つ一つのパーツを組合せたデザインの集合体と言えます。
17歳の時でした、
部活帰りに『メメント』という映画を劇場で観て衝撃を受けたのを覚えています。当時はまだまだ無名のクリストファー・ノーランという監督の作品でした。
10分しか記憶を保てない男が、妻を殺害した犯人を探し出そうとするサスペンスで、時系列が逆向きに進行するカラー画面のパートと、時系列がそのまま進行するモノクロ画面のパートが交互に繋がれた難解な映画です。記憶を保てない自分の身体にタトゥーを入れて、、、
この後、『インセプション』や『インターステラー』、『TENET』といったヒット作を世に送り出しますが、彼ほど、映画のなかに観客が体験する<没入感>を作りだせる天才はいないと思います。
そう、ノーランは映画の中で 没入感 をデザインしているんです。(と勝手に信じています。)
デザインという仕事は、狙った色や表現手法で消費者の目的やニーズを引き出す導線を作り、商品を魅力的に見せ、購入やサービスの問い合わせに繋げるきっかけを作りだします。デザイナーは意識的に、消費者を無意識に購買へと繋げている訳です。
ノーランが作りだす映画は、まさに計算されたデザインで、各作品の冒頭の惹き込まれるような作りの上手さや、作品全体の挑戦的なコンセプトメイク、撮影もCGに頼らないフィルム主義、サウンドデザインへのこだわり、キャスト選びのこだわりなどなど、挙げだすと時間が足りなくなります。
日本には、脚本家で映画監督の三谷幸喜さんがいますが、三谷監督の映画には出すぎ出演者ランキングというのがあるくらい、毎回出演する俳優が多い。三谷監督的に言うと、一つして欲しい演技を伝えると完璧に【感覚が合う】俳優をキャスティングしているらしく、ノーランにも同じ匂いを感じます。そのくらい、ベストなキャスティングをデザインしている。
ノーラン作品は難解なものが多いだけに、プロットの構成に甘い部分があると、映画批評家から度々指摘を受けることがあります。そんな批評家には「面白ければいいじゃないかい。あなたは、その没入感を超える作品が作れるのかい?」といつも心の中で伝えています。
コラムの冒頭で話した、80sや90s頃の映画に今だに魅せられているのは、この頃の映画作りの熱量をノーラン作品から感じているのかな、と思います。
デザインの魂は細部に宿る、と言いますが、デザイナーの熱量も必ず作品の細部に宿り、伝わると考えています。
映画もデザインもノーランも、最高。
(ゴルフも最高。)