
最近ハマっているTV番組がある。
様々な鉄道路線の始発駅から終着駅までの道程を、
運転席からの映像メインで構成している一時間ほどの番組だ。
登場人物はなく、映し出されるのは鉄路と景色。
時折、土地のトピックや列車のロングショットなどのインサートもある。
ひたすら画面の真ん中に向かって伸びる2本の鉄路。
後ろに流れ行くまわりの景色。
複線が単線になり、鉄路を仕切る柵などもまばらになる地方の風景。
線路のつなぎ目を通るジョイント音で、想い起こされる郷愁。
そして終着駅にゆったりと停車する列車。
夕暮れの日差しが長い影を線路に落とす。
地名は知っているけれど行ったことのないその場所にも、確かに人の生活がある。

鉄道は物理的にはA地点からB地点を結ぶものに過ぎない。
けれども産業革命以前の人々の思考を爆発的に変容、拡張させた。
人と人のコミュニケーションを増幅し、時間の概念を変え、
生活スタイルに変革をもたらしてきた。
そんな小難しい話は脇に置くとして、鉄路というのは不思議なものだ。
並行に置かれた2本の鉄の棒が、どこまでも真っ直ぐに地平の彼方へ消える。
あるいは蛇行する川とランデブーするように、うねりながら楽しげに。
はたまた車庫前で幾重にも分岐し、平面交差を繰り返し増殖する。
なんてことのない景色の中に鉄路を置くとそれはまたたく間に風景アートへと変わる。
地平線に向かって一直線に伸びる風景よりも、
ゆるやかにカーブを描き木々の向こう側へ消えていくような風景が個人的には好きだ。
画面の中で配置される鉄路は、心象を表すメタファーのようでもある。

この番組では人も風景の一部として扱われている。
キャプションやBGMも最小限。
視覚的なノイズを極力抑えながら、
鉄路の軌跡にフォーカスして見せているのがとても心地良い。
デザインの仕事においても、いかに引き算をするかは重要なポイントだと思う。
雄弁すぎると伝わらないこともあるだろう。
心を空っぽにしながら観る鉄路の軌跡は、
ふだん考えすぎる脳みそのデトックスに丁度良いのかもしれない。