クリエイターズコラム
食とデザイン

「今日は何を食べようか。」
そう考えながら、何も決めずににぎわう街を歩くのが私は好きだ。
初めて訪れるエリアなら、なおさら気分が高まる。

風情ある下町の路地に並ぶ老舗の暖簾、
最新のデザインが集まる流行の街、
普段は足を運ばない少し遠い土地。
その場所でしか出会えない食と雰囲気を味わうことは、私にとってささやかな楽しみだ。

このペースだと孤独のグルメ感が強くなるので、本題に話を戻そう。

今日は何を食べようか。
食べたいと思う基準は、実にシンプルである。
それは「美味しそうかどうか」。

料理写真に心をつかまれることもあれば、
店主の思いが込められた手書きの文字に惹かれることもある。
自分の感覚に素直に従うことを大切にしている。

仕事柄、料理撮影に関わることが多いが、
フードコーディネートを任されることもある。

料理や食材の配置、器の選び方、色合い、光の加減。
ほんの少しの工夫で「食べたい」という気持ちは大きく変わる。
赤いトマトを添えるだけでお皿全体が引き締まるように、
小さな調整が料理の魅力を最大限に引き出すのだ。

だから私は信じている。
料理に込められたこだわりは、デザインによって映し出されてこそ
人の記憶に残る「食の体験」になるのだと。

食に関わるデザインワークが、私は大好きだ。
パッケージデザイン、アプリ開発、メニューデザイン、店舗設計、サービス。
どれもがお店のコンセプトを伝える大切なクリエイティブである。

これからもコンセプトを大切に、その価値を最大化し
「無性に食べたくなる」その感覚に訴えるデザインをこれからも生み出していきたい。
そして「美味しそう」を超え、感情や物語まで届けられる存在を目指して。

日常の食卓は、小さな舞台。
食事の前に一息ついて、そのこだわりを感じてみてください。
ありふれた一皿が特別な時間へと変わるかもしれません。

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