クリエイターズコラム
トキメクノミモノ
「わたしはビールが好きだ。そしてそのビールは、キンキンに冷たくあればあるほど良い。」 こんにちは。デザイナーの藤田です。 お酒を飲むようになった当初、ビールが飲める女に憧れていたわたし。 内心「おいしくないなあ」と思って、好きでもないビールをむりやり飲んでいたのですが(若いですね) あら不思議。気づいたときにはどのお酒よりも大好きになっていました。 そうさせる魅力はいったい何なのでしょうか? わたしが挙げるとするならば、下記の3点かなと思います。 ・シュワシュワの炭酸による爽快感 ・飲みごたえある心地よい苦み ・さまざまな料理とマッチする包容力 うーん、そろそろ喉が乾いてきましたね。 もちろんビールと一口に言ってもさまざまな種類があるのですが、大きくは2つに分けられるそうです。 それは、「ラガー」と「エール」。 ラガーはすっきりキレのある味わい、エールは香り高くコクのある味わいが特徴。 麦芽・ホップなどの材料は同じでも、 酵母や発酵方法の違いで味わいが大きく変わるようです。おもしろいですね。 また、わたしは冒頭で「ビールは、キンキンに冷たくあればあるほど良い」と申しました。 しかしそれは一般的にはラガービールに限るようで、 エールビールは香りを楽しむために、すこしぬるいくらいが良いそうですよ。 わたしは種類問わず冷凍庫でキンキンに冷やしてしまいますが。。 ビールの世界はあまりに奥が深い。まだまだ知らないことばかりです。 前置きが長くなりましたが、このあたりでグラフィックデザイナーらしいお話もしてみようと思います。 わたしはクラフトビールが好きです。 クラフトビールとは、主に小さな醸造所でつくられる、オリジナリティあふれるビールを指すことが多いです。 醸造家さんのこだわりがたっぷり詰まった唯一無二の味わいが好きなのはもちろんですが、 そのパッケージデザインの多様さも魅力のひとつ。 お店で珍しいデザインの缶やボトルを見ると、つい手にとってしまいます。 いわゆるパケ買いですね。 味わいを具体的にイメージしたデザインもあれば、抽象的な世界観で作り込まれたものも。 店頭でわたしが手に取る基準は何か。 答えはただ一点!「ときめき」です。 ポップ・キュート・クールなどデザインテイストの話ではありません。 自分の心が動くか否か。それを手にした自分のことが好きか否か。 それがときめきなのです。 パッケージデザインは、手に取る人にときめきを与えられるひとつの手段です。 そしてその手段は、消費者の購買を左右する重要な役割を担っています。 わたしもデザイナーとして、 誰かの心の琴線に触れるようなデザインをつくっていけたら本望です。...
2つの文化をクロスして
ペルーと聞くと、何を思い浮かべますか。 マチュピチュやインカ帝国、カラフルな民族衣装と思い浮かぶ人もいるかもしれません。 こんにちは!実は、そんな僕は日本とペルーのクォーターです。 このコラムを見て、社内で初めて知った人もいるでしょう。 2つの文化をクロスして、僕は皆さんとは少し違う生活を送ってきました。 特にそのことを強く感じていたのが、小・中・高校生のときです。 先生や友達との会話は全て日本語で、給食やお弁当も日本食。 そこで過ごす僕は、まぎれもなく「日本人!」でした…笑 けれど家に帰ると、食卓には香り高いペルー料理が並び、家族とはスペイン語で会話を。 テレビからはペルーのバラエティ番組が流れ、「ペルー人!」としての時間が始まります! その切り替えは当たり前のようで、どこか不思議な感覚でした。 今は日本人としての生活がほとんどですが、 当時は、自分がどちらの文化に属しているのか、戸惑うことも多々ありました。 でも大人になった今では、それがむしろ大きな財産だと感じています。 スペイン語を話せることはもちろんのこと、 ペルーと日本、2つの文化を身近に感じてきたからこそ、 ちょっと違う視点や感覚でデザインに向き合えるのではないかと… ペルーは、陽気でエネルギッシュ! カラフルで大胆な色がぶつかり合い不思議と調和する。 街中では歴史と多様な文化が融合した景色が広がる。 スペイン植民地時代の建築と、インカ時代の石組みが同じ通りに並び、アンデスの音楽が風に乗って響く。 市場にはじゃがいもやとうもろこし、香辛料の香りがあふれ、 人々の笑い声と交じり合って、街全体がひとつの大きな祝祭のようです。 一方、日本の文化は、まぁ〜その正反対! 余白がつくる美しさ、静けさの中の力、そして控えめな華やかさ。 その両極が僕の中で息づき、デザインにおける色や形の捉え方に、 自然と気づかないうちに影響を与えている気がします。 だからこそ、僕はこれからもデザインをする上で、 異なる2つの文化や価値観を大切にしながら、自分らしくクロスさせて、 人の心を動かすデザインをこれからも届けていきたいと思います! デザインは、単なる見た目の美しさではなく、人の記憶や感情、価値観にまで触れることができる表現だと信じて!...
お皿を選ぶように
ご飯屋さんに行くと、ついつい器が気になって見てしまいます。 4年目デザイナーの久松です! 小さい頃から食い意地が張ってて、食べるのも呑むのも大好きな僕は、 居酒屋やカフェに行くと、ついついお皿やカトラリー、グラスに目が行きます。 食器にはお店の雰囲気やそれぞれの料理に合わせて、 様々な形・大きさ・深さ・重さ・素材・色・装飾などのデザインがあり、 実用性はもちろんのこと、ご飯を食べるときの視覚的な楽しみのひとつでもあります! また国によっての違いも見ていて楽しく、 高級感のあるフランスのアンティーク調、 北欧の柄をあしらった温かみのあるデザイン、 有田焼や信楽焼といったどこか落ち着く日本独自のものなどなど。 お店のお皿で今でも覚えているのは、 大学生の時にたまたま入ったカフェで使われていたHASAMI PORCELAINさんのお皿。 とてもシンプルながら、温かみや優しさを感じる風合いに一目惚れしました。 雑貨屋に行くのも数少ない趣味の一つで、並んでる食器やカトラリーを見ながら、 スイーツをこの小皿に載せたら可愛いなぁとか、 サラダをこのボウルに盛ったらジブリみたいで良いなぁとか妄想しています! 6人家族の実家には、食器棚に入りきらないほどの器があり、 小さい時からなぜかお気に入りだったものも。 そのうちの1つがこれ。 よくケーキを食べる時に使っていた、ガラス製でフチが波打っている綺麗な小皿。 4種類ぐらいあってそれぞれ別のお花が描かれてたんですが、 妹といつも黄色い花のやつを取り合ってました。 家に置いてあるものを見れば、なんとなくその人の生活が滲み出てくるのが食器の面白いところ。 何人暮らしか、お子さんはいるか、お酒は飲むか、几帳面か大雑把か、などなど。 なんとな〜くですが。   突然ですが、ここで最近買ったシンプル食器を2つご紹介したいと思います! 1つ目は側面にラインが入った北欧調のシンプルなボウル。 朝食にヨーグルトをよく食べるので、サイズも飽きのこないデザインもちょうど良いなぁと思って買いました。 スモーキーブルーの色合いがお気に入り! 2つ目は表面の陰影が美しい美濃焼の小皿。 これに黄色いスイーツ、チーズケーキとかプリンなんかを載っけたら絶対可愛い!と一目惚れ。 このコラムを読んでくださってる皆さん、甘いものの差し入れお待ちしてます!   料理に合わせてお皿を選ぶときの楽しさは、 パッケージデザインの仕事にもちょっと似ているところがあって。 商品の本質を理解し、いかに魅力的にお客様に伝達するか。 商品の特徴・コンセプト・ターゲット・価格・売場などから、 仕様・素材・大きさ・色・フォント・世界観…などなど、 それはもう書ききれないほど細かい部分まで、 考えを巡らせて選択するおもしろさがこの仕事にはあると思います! 料理を引き立てる、あくまでも脇役として食器を選ぶときのように、 楽しんで、考えて、これからもデザインワークに励みます!...
うずらがくれた時間
「ゴキッチョ〜!」 ……なんの鳴き声?と思うかもしれませんが、 これは我が家のうずら、まるちゃんの声です。 とにかくよく鳴き、声が大きく、なつかない。 指を差し出せばつつかれるし、そっと手を近づけても「ジッ」と睨まれる始末。 「これって、ペットっていうより家畜じゃない?」と笑ったこともあります。 でも、そんなやんちゃな性格が、どこか憎めなくて。 朝から晩まで元気いっぱいに過ごすその姿に、ついつい目を細めてしまう。 もともと、うずらを飼いたがっていたのは、母でした。 鳴き声が「御吉兆(ゴキッチョウ)」と聞こえることから、縁起がよいとされているらしいのです。 そして、私が大学に入ってすぐのこと。 うずらを飼っている友人と出会い、その子を家族で一時的に預かったのがはじまりでした。 家族みんな、あっという間にその小さな存在の虜になってしまって。 いつしか、「またうずらと暮らしたいね」という気持ちが自然と生まれました。 そして後日、その友人の孵卵器をお借りして、スーパーで買ったうずらの卵を温めてみることに。 あの小さな卵から、ちいさなちいさなヒナが姿を見せてくれたときの感動は、今でも忘れられません。 ほわっほわの産毛に包まれたヒナが、かわいくて。いとしくて。 気づけば家族みんな、うずらのいる暮らしが普通になっていました。 月日が経ち、彼も老鳥と呼ばれる年齢に。 気づけば、あんなに響いていた「ゴキッチョ〜!」も聞こえなくなり、 じっと眠そうにしている時間が増えました。 そんなある日、鍼灸師の母が「お灸をしてみようか」と言い出しました。 まるちゃんを手で包みながら半信半疑で見守っていると、 羽をふわっと毛羽立たせ、じっとお灸のあたたかさを感じているようでした。 その後、本当に少し元気を取り戻したのです。 命に対してできることって、 案外シンプルで、あたたかいものかもしれないなと思いました。 6月、彼は静かに旅立ちました。 5年も生きてくれたまるちゃん。 声はちょっとうるさかったけど、本当にかわいかった。 今も空になったケージを見ると、あのガニ股でドテドテ歩き回る姿が、ふいに目に浮かびます。 今日は8月1日、もうすぐお盆が来ます。 お線香の香りが部屋に漂う頃、もしかしたらまた「ゴキッチョ〜!」と帰ってくるかもしれません。 できればもう少し静かに帰ってきてほしいけれど、でもやっぱり、また会いたいな。 デザインの仕事をしている私たちにとって、 日々の中で何かを“整える”ことは、ごく自然な行為です。 でも、彼と暮らしていた時間は、もっと直感的で、体温のある“整える”の連続でした。 うずらがくれた時間は、形には残らないけれど、 きっとこれからの暮らしや仕事のなかに、 静かに、でも確かに息づいていくように思います。 まるちゃん、次に帰ってくるときは、もうちょっと優しくつついてね。...
パリの空の下、ウエストンを想う
昨年念願のフランスに旅行に行った。 パリの街、足元に広がるのは石畳だ。 決して滑らかとは言えないその凹凸のある道を、颯爽と歩くパリジャンたちの姿には風格が漂う。 そして、そんなパリに最もふさわしい革靴ブランドが、JMウエストンだ。 パリ8区、サン・トノレ通りに構えるJMウエストン本店。そこは単なる靴屋ではない。 まるでギャラリーのように美しく整えられた空間には、クラフトマンシップが息づく一足一足が静かに並んでいる。 革靴を好きになって数年、パリに行けばJMウエストンの本店に必ず行こうと思っていた。 購入する勇気はなかった。なぜなら私の欲しいゴルフ#641というモデルは800ユーロ越えの品、 簡単に決断できる金額ではない。 ブラッド・ピットのスマートな弟のような店員が丁寧に接客してくれた。 「Voulez-vous essayer ?(試してみますか?)」の言葉に私が抗えるすべもなかった。 ウエストンのウエストンたる真骨頂はフィッティングである。 ハーフサイズで選べる大きさと幅、他のブランドには無い細やかな設定。 何時間でも気が済むまでのフィッティング。 色んなデザイン(皮革違いや、色)とサイズをフィッテイングさせてもらった。 私は、結果、当然、購入していた。 そして、おすすめの専用のシューキーパーも購入。(110ユーロ) パリの空の下、ウエストンを想いながら、 ゴルフの入った紙袋を持って歩く私は、人生最高、 至福の時間を感じていた。...
多種多羊
皆さん、羊を思い浮かべるとき、どのような姿をしているでしょうか。 こんにちは。一番好きな動物は羊、デザイナーの新田です。 私が羊を好きな理由、それは人との関わりの中で生まれた多様性にあります。 羊の歴史は古く、紀元前7000年から飼育され、古今東西人々の生活を支えてきました。 その中で様々な品種の羊が生み出され、現在では200種以上とも言われています。 子供の頃、私は羊といえば白くてもこもこした生き物という漠然とした認識を持っていたのですが 学生時代に羊のことを調べていくにつれて、白いもこもこだけではなく 黒色・茶色・クリーム色・ブチ模様・長毛・ピンと立った耳・凛々しい角など 個性的な特徴を持った品種がたくさん存在することを知り、その奥深さに魅了されたのでした。 今回はたくさんの品種の中から私が好きな羊を3種紹介させていただきます。 1.ムフロン Mouflon 野生の羊の中で一番小柄な羊で。 家畜羊の祖先種の1つといわれています。 主にアジア~ヨーロッパの山岳地帯に生息しています。 大きく螺旋を描く角と厳しい環境で生き抜く様が野生としての気高さを感じさせます。 2.ヴァレーブラックノーズシープ Valais Blacknose sheep 真っ黒な顔と真っ白な身体のコントラストが特徴的な太毛の品種で、 子羊は特にもこもこした人形のような可愛さがあります。 スイス原産の羊で、アルプスの高原で飼育されています。 実は日本でも飼育されていて、滋賀のローザンベリー多和田、 栃木の那須どうぶつ王国で見ることができます! 3.ラッカ Racka ハンガリー原産の羊で、絶滅危惧種の羊。 カールを持った長毛と、他の品種には見られないドリルのような螺旋の角が特徴的。 角の長さはオスで50cm、メスで38cmにもなるそうです。 毛色にはバリエーションがあり、クリーム色から濃い茶色、全身真っ黒な個体もいます。 特に黒いラッカは無類の格好良さを誇ります。 一言に羊と言っても、可愛い品種から格好いい品種まで千差万別。 羊は古くから乳用・食用・毛用など人の営みに合わせて多種多様に姿を変えてきました。 デザインの仕事にも同じようなことが言えると私は考えます。 同じ食べ物のパッケージをデザインするとしても、価格帯やターゲット、 訴求したい内容によってデザインは大きく変わってきます。 お客様の求めることをつぶさに汲み取り、 お客様の想像を超える多種多様な提案を作ることを心掛けていきます!...
空と時間の色彩
突然ですが、皆さんは四季の中でどの季節が好きですか? 近年の暑さには堪えてしまいますが、 私は世界の彩度が上がって見えるので夏が好きです。 仕事などでモヤモヤとしてしまった日でも、空が晴れやかだと自然と気持ちも前向きになってしまいます。 子供の頃、活発な遊びとは別に友人と空が開けた屋上などに登って寝そべりながら漫画を読んで過ごすという なんとも穏やかな時間を過ごしていた時期があり、移り変わる空はとても身近な存在でした。 その影響か社会人になっても、ふとした瞬間に空の色を眺めてしまいます。   そんな多彩な空には時間や気候によってそれぞれ美しい名前があるのはご存知ですか? 「曙」明るくなり始めた頃の空色 「黎明」夜明けの美しい空色   「紺碧」日差しの強い真夏の深く濃い青色 「茜空」夕焼け空の赤色   これらの空の色は、デザインの配色を考える上でも非常に参考になります。 例えば、日の出前のピンクから青のグラデーションを取り入れれば、情緒的な印象を与える事ができます。 昼間の青空と白い雲を参考に、爽やかで清潔感のある配色も素敵です。 夕焼けのグラデーションは、複雑で奥行きのあるデザインに活用できます。 空の色を観察し、その名前を知ることで、デザインの幅はさらに広がります。 自然が作り出す美しい色彩を、日々のデザインに取り入れてみるのはいかがでしょうか。  ...
雲を眺める
何も予定のない休みの日、ふと家の近くの川へ散歩に行きぼーっとする。 川の流れを見たり、とんでいる鳥を目でおったり、それから空高くに浮かぶ「雲」を眺めたり。 そうするとモヤモヤとする気分が晴れて、なんとなく元気になります。 そんなリフレッシュの仕方で心に余白を作っていますデザイナーの中田です。 子供の頃から雲を眺めるのは好きでしたが、最近も散歩の時は雲を眺めることが一番楽しく感じています。 ぼーっと何も考えずに、ゆっくりと流れ変わっていく形を眺めるのも、 真上にある雲を見て空の広さに圧倒されながら風を感じるのもとても気持ちがいいです。 空に雲が浮かんでいるからこそ、 空の広さをより感じられたり、空に物語を想像できたりして楽しく、 悩んでいたことが小さく感じ、ネガティヴなことを考えていたことすら忘れさせてくれる、 そんな雲という存在に心を奪われてます。 学生時代の作品制作のテーマにも雲を題材にしたことがありましたが、 同じ雲といっても大きさや形、浮かぶ高さなどによってそれぞれに名前がついていたり、 意味があったり、想像以上に種類があったことを知り驚かされました。 これからの暑い時期によく見られるのは、名前の聞くことが多い「積乱雲」ですね。 実は同じ「積乱雲」の中でも細かな形の違いで呼ばれ方が変わったりして、これもまた面白いです。 意外と知られていないですが、見た目の近い「入道雲」という呼び名は細かくは積乱雲ではなく、 雄大積雲と呼ばれる積雲という種類に入ってきたり、 他にも「かなとこ雲」や「かみなり雲」などとも呼ばれたり…調べだすと奥が深いです。 同じ形は一つもなくて、次々に変化し続けて、 でもちゃんと「雲」という存在でありつづけている。 ふとデザインの世界も、実は少し似ているなと思います。 確かな正解があるわけではなく、見る人や使う人の心にどう届かせるかで形をかえ、 意味や価値を持たせるデザインの世界。 雲は一度きりの形を空に描き、誰かに意味や価値を与えて消えていくけれど ずっとあり続ける存在で、形にとらわれすぎず、でもちゃんと“らしさ”を持っているもの。 私もそんなデザインをこれからも目指して作っていきたいと思います。 ...
風に誘われて  デザインの本質へ
風に誘われて 木の葉がひらひらとどこからか舞い降り まるで地面に落ちるまでの時間を優雅に戯れるかのように 柔らかな軌跡を描きながら、美しく儚く、想いを紡ぐ 風に誘われて 鳥のさえずりが、どこからともなく響き 小川のせせらぎとともに静かに調和する 思っているよりも時間はゆっくりと刻まれていて 変化に抗うことなく自然の摂理に身を委ねている デザインの発想を求めて週末に、思い立って車のキーを手に取った 最後にその場所に訪れたのは三年ぐらい前だっただろうか 都心の喧騒を少し離れ、心惹かれる神社へと車を走らせる 特に大きな理由があるわけではない ただ、静かにほんの少しだけ“余白”に身を置きたく 自然の彩りのもとへと誘われた 朝の光がまだ柔らかい時間に家を出て 窓の外を流れていく野山の風景に、心がほどけていき “生きているデザイン”のようなものが目の前にひろがる 山道は未完成のキャンバスを思わせる 何も足されていないのに、完全で、美しい 良いデザインは、“余白”にある 足すことより、削ぎ落とすことも大切である 目的地の神社は、山あいにひっそりと佇んでいた 鳥居をくぐると空気が一変し、ひんやりとした静けさが辺りを包み込む 背筋が自然と伸び、歩みはゆるやかになり、境内には誰もいない 耳に届くのは、風に揺れる木々の音と鳥のさえずり そして、自分の足音だけが静かに響いている 手水舎で手を清めると、掌を包む静寂の水は 無垢な水晶のかけらのような感触に包まれる 賽銭箱の前でそっと目を閉じ デザインと向き合う毎日を支えてくれる環境への感謝を伝える 静けさの中で、自分と向き合うこの時間を大切に思う 本殿で手を合わせたあと、静かに山道へと足を踏み出す 澄んだ空気の中、木々がそっと語りかけるように揺れ その響きは神聖な音色を帯びて耳に届く 急な山道を登るたびに 日常が一枚ずつ剥がれ落ちていくようで、心は少しずつ軽やかになっていく 奥宮で静かに参拝し、そのまま山頂へ たどり着いた先には、まるで絵画のような景色が静かに広がっていた 胸の奥から、澄みわたるような感情がふわりと立ち上がり 自分の中の静けさとそっと向き合う デザインと向き合うということ― デザイナーとして日々感じるのは、未来というものがいつもまだ輪郭を持たない、ということ どんなに情報があふれていても、どんなにトレンドを追っていても これから先に“確実な正解”を見つけるには試行錯誤が必要だということ だからこそ、過去の経験や記憶、今この瞬間の情報を整理しながら 一見関係のないように思える断片も見落とすことなく拾い集めて “モノ”と“コト”の本質に向き合うと自ずと次に進むべき方向が少しずつ見えてくる 全ての感覚に細かく耳を澄ませて 今ある空気感、触れた時の素材の質感、本質に潜む光のようなものを丁寧に捉えることで ようやく“カタチ”にしていくヒントが見えてくる気がする デザインとは、単に美しさや機能をつくることにとどまらず 見えない雰囲気や、誰かの心地よさの感情にそっと寄り添うこと そうして生まれたクリエイティブは、誰かの記憶に静かに息づき、“普遍的な価値”になり得ると信じている 不確かな未来を、確かなカタチにするために “今ここにあるものと真剣に向き合うこと” それが、自分にとっての創造の原点なのだと 帰り道、車に戻ると 少し心地よい風が吹き、日差しはやさしく柔らかかった “心の感度”が、静かに戻ってくるのを感じる 自然に触れるのもきっとひとつの“クリエイティブ”なのだろう そんな時間が、また、次のデザインを少しづつ良くしてくれる気がする  ...
衝撃的な出会い
ディレクターの冨長です。 ところで皆さんは、朝の楽しみはありますか? 私の毎朝の楽しみには、コーヒーを飲むことでもなく、読書することでもなく、 眠い目を擦りながら、服を選ぶ瞬間です。 今日は気合を入れたいな、肩の力を抜きたいな、とか、毎日の気持ちに素直になって コーディネートしてます。 そんな私がファッションにのめり込んだきっかけは、高校生3年生の卒業間近で、 ふらっと入ったショップでジャケットを試着して鏡に映る自分の姿を見た時にビビッと衝撃を受けたのを今でも覚えています。 服一つでこんなにも人の印象が変わるのかと。 その日を境に毎日のように服について調べることが増え、コーディネートの配色や服のシルエット、ディテール、装飾、 こだわりだしたらキリがないくらい細かい魅力が服には詰まっています。 デザインの業界に足を踏み入れて、仕事をしてからもその経験が活きていると実感しています。 例えばTPOを考えてコーディネートを組むことと、デザインする商品が誰の手に取られるのかは非常に近しい思考で、 客観的な物事への捉え方を趣味の中で培われたと思います。 分野は違うけれど、視点を変えるだけで他の事に活かすことが出来ることを教えてくれました。 衝撃的な出会いが思わぬ形で繋がって、自分を成長させてくれる。 たかが趣味だなんて言わず、新しいことにチャレンジすることが あなたを成長させてくれる衝撃的な出会いだったりするかもしれません。 これから暑い夏が始まり、自身の装いにも変化が訪れる楽しい季節がやってきます。 そろそろ開催されるメンズのパリコレクションでも見て、最新のトレンドや今年やってみたいファッションでも考えながら、 一緒にアツい夏を過ごしましょう!...
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