クリエイターズコラム
パッケージデザイン×生成AIの可能性
株式会社ヘルメスでアートディレクターをしている千野根(ちのね)と申します。 初対面の方には、「珍しい苗字ですね」と、必ず関心を持っていただけます。 調べたところ、苗字のルーツは栃木のようでして、栃木の中でも珍しい苗字になるようです。 直接出会ったことは一度もないレアな苗字ですので、同姓の方はもれなく親戚ではないかと勘繰ってしまいます。 さて本題です。この業界で働き続けて早20年以上経ちますが、デザインの現場における技術の進化は、 ここ数年凄まじいものがあると考えています。 今私が注目しているのは、生成AIです。AIは今後さらに、もの凄いスピードで進化するはずですが、 パッケージデザインの現場で、生成AIは活用できるのか? 生成AIのサービスでよく聞くところですと、 ・Adobe Firefly ・DALL·E 3 ・MidJourney このあたりかと思います。 「Adobe Firefly」は、Photoshop2024に実装された目玉機能です。 「DALL·E 3」は、ChatGPTの有料版でも利用できるようになりました。 シュルレアリスムの巨匠の名にちなんでいるためか、生成される画像のタッチが、どことなく絵画的な印象です。 画像を生成するには、プロンプトと呼ばれる「こんなイメージでお願い!」という詳細を入力する必要があるのですが、 日本語に対応しており、あれこれ好き勝手にオーダーしても、嫌味一つ言わずにせっせと画像を生成してくれます。 「MidJourney」はプロンプトを英語で入力する必要があり、私にはちょっとハードルが高い印象です。 ChatGPTで画像生成する際、私のオーダーはこんな感じ(あくまで例です)。 「カジュアルなおせんべいの詰め合わせ シズル感のあるイメージ」 ↓ 「子供っぽいので大人が食べるおせんべいで、50代でも買えそうな感じで。おせんべいなので洋菓子じゃなくて和菓に」 ↓ 「デコラティブすぎるのでもっとシンプルに、そして和のイメージで」 ↓ 「今度はシックで重厚すぎるから、もっと軽やかな印象に」 ↓ 「ちょっと近づいた。配色をネイビー、ゴールド、グレーの3色基調にしてみてほしい」 ↓ 「うん、いい感じ!」 そもそも私のオーダーが荒っぽいのでは?というご指摘は謙虚に受け止めつつ、 チャット感覚でオーダーを出し続けて、少しずつ自分のイメージに近づけていくプロセスが面白いです。 近づくどころか、思いもよらない方向に離れていくこともあるので、「なんでそうなる?」と笑ってしまうこともあります。 結論として、プロの現場で活用できるクオリティで画像生成することは難しいものの、 イメージの整理や、アイデアの壁打ちには活用できると考えています。 今後AIの進化がさらに進み、ビックデータを元に高品質なパッケージデザインを瞬時に生成できるようになったら、 パッケージデザイナーの仕事はなくなってしまうのでしょうか? 個人的な見解としては、それはそうそうないと考えています。 ある程度のものや、既視感のあるパッケージデザインは、AIでも生み出せるかもしれません。 しかし、クリエイティブには人の心を揺るがすようなエモーショナルな感覚が必要で、 それは、その時代を生きるデザイナーにのみ、表現できるものであると信じています。 生成AIを優秀なクリエイティブ・ツールとして活用しながら、その一方でAIや数値では表現できないような、 心に刺さるクリエイティブをお客様に提供していきたい、そう強く考える今日この頃です。...
カブトムシとクワガタとデザイン
ひょんなことから、カブトムシとクワガタ育成がマイブームである。 みなさんは最強王図鑑 ~The Ultimate Battles~というコンテンツをご存知だろうか? 恐竜から動物、海の生きもの、虫など、ありとあらゆる生物がCGで異種格闘技戦を行う番組である。 4歳の息子がこれに比較的長い期間ハマっており、幾度となくみせられ続けている。 聞き慣れない生物の名前の中には、ヘラクレスオオカブトやらコーカサスオオカブトなど、 昔から人気のあった昆虫の名前もちらほら。 そして季節はうだるような夏であり、夏といえば虫取りだ。 私の中でにわかに昆虫熱に火がつき始めた。 私の住むアパートからほど近くの公園に、カナブンの集まるクヌギがあるのだが、 しばしば観察に行っても、カブトムシやクワガタのような“スター”には遭遇できないでいた。 そんな7月のとある暑い夜、妻と息子が虫取りにいくというので、会社帰りにぶらり立ち寄ることに。 そこにはなんとカブトムシがいたのである。しかも二匹。 雌雄一体ずつで、大きさとしては小ぶりなものの、 この都心でカブトムシに出会えたことに感動し、久しぶりに興奮してしまった。 昆虫熱が本格的に始まったのはこの頃からである。 それから一週間、会社帰りには毎晩のようにその木へ通い詰めた。 これは奇跡というしかないが、ほぼ毎日、カブトムシを1〜2匹を毎晩捉えることができたのである。 結果的には雌雄合わせて10匹ほどになった。 採集熱は夏休み中も加速し、8月に実家のある御殿場に帰省した際には毎晩と毎朝、 取り憑かれたかのように採集が日課になっていた。 カブトムシも数匹はいたが、ここで採れたのはほとんどクワガタだった。 これは少し冷涼な気候による生態系の違いかもしれない。 採れたのはコクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタといったメジャーどころではあるが、 最終的に、カブトムシ、クワガタすべて足すと20匹以上が集まった。 ほとんどを単独のケースで飼育しているため、いま我が家の玄関は飼育ケースであふれている。 それにしても、昔も今もなぜこれほどまでにカブトムシやクワガタに惹かれるのだろう。 子どもの頃は多くの、特に男子はほとんど通る道だし、大人になった今でも惹かれるのは、懐かしさだけではないはずである。 私の想像だが、それら魅力の一つはそれら昆虫のフォルムが、 他者と戦い、生き残るためだけに進化を遂げた、ミニマルで美しいデザインだからだということ、 そしてそのデザインのバリエーションが無数に存在するという多様性にロマンがあるからではないだろうか。 大きな顎(あご)や角、そしてその形状は他者と戦うためのものだけの機能であるし、 平たい身体の種類のものは風に飛ばされないように、木の中に隠れやすいように進化を遂げたという説がある。 そんな洗練された鎧を纏った戦士たちが小さな生態系(飼育ケース)の中で、夜暗くなると蠢き出し、 我先にと突進し餌を貪り喰う。敵とあれば倒しにかかる。その姿は実に本能的であり野性的。 なのにちょこまかと動き回る姿はなんとも愛おしい。このギャップがたまらないのだ。 涼しくなり夏も終わりつつあるが、その美しく愛らしいデザインを眺めながら、 来年に向け繁殖できるかどうかが楽しみな毎日である。...
JEEPとデザイン
ジープと聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは、無骨で堅牢なデザインだろう。 その起源は、アメリカ軍が第二次世界大戦中に求めた軍用車にある。 1941年、ウィリス社が開発したジープは、高い耐久性と機動性を求められ その結果生まれたデザインは「機能美」の極みといわれている。 戦後、ジープは市販車として転用され、アメリカの象徴的な車種となった。 無骨なデザインはオフロード車としての実力を誇示し、多くのファンを魅了し続けている。 ジープのデザインは、シンプルでありながらも力強く まさに「形は機能に従う」を体現している。 初めにジープに触れたのは、実車ではなくラジコンカー。 とりわけタミヤの「ワイルドウィリー」は、幼少期に親に買ってもらって仲間と夢中で遊んだのを覚えている。 ワイルドウィリーは、ジープの特徴的なデザインを忠実に再現しながらも、遊び心を忘れないコミカルなフォルムと走りが魅力だ。 またオフロードでの本格的な走行性能は、子供から大人まで楽しめる要素になっている。 オフロードでの走行性能という点では、ジープのデザインは他に類を見ない。 高い地上高、強固なサスペンション、4WDシステムは、険しい地形でも安定した走行を可能にする。 ジープは「どこへでも行ける」車として、多くの冒険者にとっての理想の車になった。 ジープのデザインの魅力は 無骨さの中に美しさを見出すことができること。 機能性を追求するあまりに無駄を削ぎ落とした結果、純粋な美しさが生まれたといわれている。 これは、他の多くの車が装飾や流行を追求する中で、ジープが一貫して持ち続けている哲学であり変わらない魅力の一つだろう。 自分にとってジープとは単なる車として選択するものではなく、生き方にも近いものがある。 これまでにジープを2度乗り継いできたが今後もジープを選ぶことは変わらないだろう。 どうしょうもなくその存在とデザインに惹かれるのである。...
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